1章「足りないことに向き合えるか」
1章「足りないことに向き合えるか」
僕は子供の時分より、嫌なことは目を背けてしまう習性を持つ。
おぼっちゃまと言われても仕方ないほど、楽観的な弱虫だ。
それが転じて、就活中に突き付けられた言葉は脳裏から剥がれない。
「じぶんを良く見せようとするの、正直気持ち悪いよ」
あぁ、この時の君の心のえぐられように、その不快感に、見舞いを出したいくらいだ。
そう何を隠そう、自分が大切に扱われないことに極端なほど拒絶反応を示すのだ。
だから表面を覆うしか。特殊能力、カッコつけ。
周りはみんな気づいていても言ってくれない。君がきっと傷つくだろうから。
そういえばよく当たるという占い師にも言われた。
「君は人のことを信用しない、いやできないんだ。八方美人だ」
どこまでも自分を守ることになる。
この性格は、仕事に支障をきたした。
自分のミスを受け入れられないからだ。
裁量にかまけて、失敗や上手く行かないこと、怒られそうなことを上司に報告しない。
何とかそれを避けるために労働量でカバーすることもしばしば。
この事象の解説をしようか。ある失敗のときの上司の問いかけが全てだ。
「何のために仕事してるんだ? 自分の目標のためか?」
涙がたくさん出た。自分の愚かさに吐き気がしそうだった。
ホウレンソウが出来ないのは、己にしかベクトルが向いていないからだ。
VISIONのため、顧客のため、チームメンバーのためを考えたら、
上手く行かない時こそ、仲間に共有せねばならなかった。
ビジネスの世界で、「他者視点」が欠落しているものは話にならない。
自分が結果への責任を背負う範囲においては、未熟な考えが原因であり、それを指摘してくれる上司の存在がいた。大きな失敗に繋がることもあったが、痛みを通して事業思考に近づくことが出来た。
いち早く責任を伴うポジションを任されることは、
「足りない」をたくさん知れるチャンスであったのだ。
ポジティブ思考は大いに結構であるが、
「足りない」には真摯に向き合うことが前提だ。
君にアドバイスを贈るなら。
今は出来なくていいし、"足りない"を周りに素直に認めればいい。
自分のちっぽけなプライドが守られる代わりに、
人からの信頼とチームでの成功が手に入るよ。